公益財団法人東京都予防医学協会

新生児の健診(医療機関向け)

検査の流れ

採 血

保護者に本検査の説明を十分行った上で、
検査申込書によって同意を得た児のみに検査を実施してください。
日齢4~6日目(日齢4日=96-120時間を推奨)に、
新生児スクリーニング検査専用のろ紙に採血してください。

郵 送

乾燥後、専用の封筒にろ紙血液を同封し採血後24時間以内に郵送してください。

検 査

本会に到着後、検査を行います。
受付後、1週間程度で申込書に記載の医療機関あてに、結果をお返しします。

結果通知
  • 正 常

    追加の検査はありません。



  • 再検査

    検査結果を確かめるためにもう一度検査を行います。結果書とともに送付されたろ紙に採血を行い再度ご提出ください。

  • 精密検査

    精密検査対象の疾患を診断可能な“専門医療施設”で受診するよう保護者へお伝えください。本会から専門医療機関をご案内することも可能です。

申込書の記入方法

申込書の記入例


【申込書注意事項】
(1)フリガナ欄は氏と名の間を1マス空け、濁点・半濁点つきの場合でも1マスに記入してください。
(2)児氏名欄は決まっている場合、名前のみご記入ください。双子以上の場合は児氏名を必ずご記入ください(決まっていない場合はイツシ、ニシ・・・と記入)。
(3)字句を間違った場合には、必ず二重線を引いて改めてご記入ください。
(4)黒ペンでご記入ください。
(5)太枠内は検査を受けることへの同意を兼ねるため、必ずご本人あるいはご家族の方がご記入ください。
(6)申込書は1枚目(検査機関送付用)のみ提出してください。

抗生剤使用の記入について

抗生剤を児に使用した場合は、2(有)と記入してください。特に児または母親がピボキシル基含有抗菌薬を使用した場合、偽陽性となる可能性がありますのでご注意ください。

哺乳状況の記入について

哺乳量は採血医療機関の判断で1:良、2:不良、3:極めて不良を記入してください。
参考文献として、日本マススクリーニング学会雑誌,9(2),81,1999:市原 侃 をご参照ください。

採血について

採血時期について

出生日を0日として日齢4~6日目(日齢4日=96-120時間以内を推奨)に採血を行ってください。
低出生体重児および哺乳不良児は、下記に示す時期にもう一度採血を行ってください。
なお、要再検査の結果が届いた際には、下記時期に関わらず直ちに再採血を実施してください。

① 出生体重が2000g未満の低出生体重児
原則として初回の採血を日齢4~6日目に行ってください。後日、本会から初回の検査報告書および「低体重2回目」用の申込書兼採血ろ紙(個別シール付)を送付しますので、
1)生後1ヵ月
2)体重が2500gに達した時期
3)医療施設を退院する時期
いずれか早い時期に1回再度採血を行ってください(最長で生後1ヵ月です)。

※画像をクリックで拡大します

「低体重2回目」用の申込書兼採血ろ紙(個別シール付)イメージ


② 哺乳が十分量摂取されていない児
原則として初回の採血を日齢4~6日目に行ってください。後日、本会から初回の検査報告書および「哺乳不良」用の申込書兼採血ろ紙(個別シール付)を送付しますので、その用紙を用いて再度採血を行ってください。

※画像をクリックで拡大します

「哺乳不良」用の申込書兼採血ろ紙(個別シール付)イメージ

採血方法について

「乾燥ろ紙血液検体作成の方法と注意点」の動画

基本とされる採血手順を以下に示します。(クリックで開きます)

  1. 採血セットを用意する。
    採血ろ紙・消毒用アルコール綿・採血器具(専用のランセットが望ましい)・滅菌ガーゼ・絆創膏
  2. 採血は哺乳後2時間前後の沐浴後が望ましい。
    (沐浴ができない場合は、採血部位を温タオルで3~5分加温する)
  3. 採血は一般的に足底の外側部に行う。(図1)
    (足底の内側部・手背静脈も使用される場合がある)
  4. 消毒用アルコール綿で採血部位を消毒し乾燥させる。
  5. 採血部位をランセットで2~3mm穿刺する。
    (利き手と逆の手で足関節を固定し利き手で穿刺する)
  6. 最初の一滴は滅菌ガーゼで拭取る。
  7. 穿刺部から滴下する血液をろ紙に印刷された円の点線を少しはみ出すように、1回でろ紙の裏面まで十分しみこませる。(図2)
  8. 採血後、滅菌ガーゼで止血し絆創膏を貼る。
  9. 採血後のろ紙は汚染しないよう取扱い、ろ紙を水平に保持し室温で2~3時間自然乾燥させる。
    (直射日光の当たる場所や高温多湿の場所は避ける)
  10. 乾燥後は専用の封筒に入れ、採血後24時間以内に郵送する。
図1
図2
おもて


うら

採血時の注意点

採血方法によっては後遺症を残したり、測定結果に影響を及ぼすことがあります。特に以下の事項にご注意ください。

採血時の後遺症について

  • 穿刺の際に踵(かかと)の後部および中央部や踵骨で採血を行わないでください。踵骨骨髄炎・深部血管や神経損傷・歩行障害などの合併症の恐れがあります。

測定結果への影響について

以下に、検査結果に影響を与える要因を示します。正しくろ紙血液が作成されなかった場合、偽陽性(過剰な陽性判定)、偽陰性(検査で正しく発見できないこと)につながるおそれがあります。

該当作業 検査結果に影響を与える要因の例
ろ紙の取り扱い:
薬品等の付着に注意してください
(ろ紙部分を素手で触れないようお取り扱いください)
  • ヨードを含む消毒薬
  • ステロイド軟膏
  • エッセンシャルオイル
  • アミノ酸含有輸液製剤
  • 唾液、汗などのDNA成分 等
血液採取時:
使用しないこと強く推奨します
  • ヘパリンおよびEDTA(抗凝固剤)を含む毛細管や採血管の使用
血液ろ紙の作成:
避けるようにお願いします
  • 血液の2度づけ
  • 高温多湿下でのろ紙血液放置
  • 長時間(1日以上)の放置・保管
  • 不完全な乾燥・未乾燥のろ紙血発送
※日本マススクリーニング学会の以下のページをご参照ください

郵送時期に関する注意点

採血した日から本会へ到着するまで、2週間以上経過すると、ろ紙血液中の微量成分が劣化している可能性があるため検査ができません。
改めて新しいろ紙に採血し、速やかに郵送してください。また、本会に到着した際に検査が実施できないと判明した場合、電話と結果報告書にてご連絡します。
なお、乾燥後のろ紙血は、遅くても採血後24時間以内に郵送するよう徹底してください。

検査結果について

先天性代謝異常等検査は、検査結果を以下の3つに分けて判定しています。
1.正常、2.要再検査、3.要精密検査

それぞれの意味は以下の通りです。

  1. 正常
    追加の検査はありません。本検査は終了となります。
  2. 要再検査
    検査数値が目安となる基準値を超えているため、再度検査をして「1回目の検査数値を確認」します。再検査で異常がなければ正常と判定されますが、1回目と同様に基準値を超えている場合には要再々検査または要精密検査となります。
  3. 要精密検査
    「すぐに精密検査実施医療機関を受診する必要がある」という意味です。精密検査実施医療機関では、診断のためにさらに詳しい検査を施行します。その結果、正常と判断される場合もあります。本検査では、早期医療介入が必要な疾患が多く、良好な予後を得るには早期治療が極めて重要です。そのため保護者には、各医療機関から速やかな精密検査実施医療機関の紹介ならびに受診指導をお願いします。

要精密検査と判断されたら

精密検査が必要と判断された場合、本会から採血医療機関に電話と結果報告書で、疑われる疾患や検査数値および区市町村から発行される乳児精密健康診査受診票についてご案内しますので、採血医療機関からは保護者に対し、速やかに精密検査実施医療機関を受診されるようご案内をお願いします。

乳児精密健康診査受診票の取得について

区市町村から発行される乳児精密健康診査受診票は、対象児が都内に居住している場合発行されます。保護者に対しては、居住している区市町村の母子保健担当窓口に問い合わせして、発行場所を確認してから本受診票を取りに行くようご説明ください。


本会から郵送する精密検査に関わる書類について

「精検依頼書在中」と印字された黄色の封筒に精密検査に関わる書類が同封されています。
本封筒がお手元に届いた際は速やかに開封して中身をご確認ください。


※画像をクリックで拡大します

  1. 先天性代謝異常等検査報告書(医療機関用)・(保護者用)
    本報告書には、医療機関用と保護者用がミシン線で繋がっていますので切離してください。下部の保護者用をお渡しいただき、母子手帳に保存するようご指導ください。
  2. 先天性代謝異常等検査報告書(精検機関提出用)
    本報告書には、疑われる疾患や検査数値が記載されています。保護者には精密検査実施医療機関の担当医に提出するようご指導ください。
  3. 先天性代謝異常等健診の主な専門治療機関
    東京都で精密検査を実施可能な医療機関が記載されています。内分泌疾患や代謝異常症を専門に治療する医療機関もございますので参考にご覧ください。
    なお、免疫不全症・小児神経疾患・ライソゾーム病の精査医療機関一覧については準備中です。(2025年4月現在)
  4. 陽性基準
    東京都が対象とする先天性代謝異常等の対象疾患とその基準値が記載された一覧です。
  5. 精密検査実施状況の調査依頼
    精密検査対象者が適切に精密検査実施医療機関に受診したかを把握するための調査依頼です。本通知受領後1週間以内に、案内書類に記載のQRコード、もしくはURLより、本会ホームページ専用フォームにて必要事項を入力してください。
    ※本調査は厚生労働省子ども家庭局母子保健課長からの通知(子母発0330第2号 平成30年3月30日)に基づき、東京都との検査委託契約にしたがって実施しています。

2025年4月現在

新生児マススクリーニング関連疾患の分析依頼について

東京都予防医学協会では新生児マススクリーニング陽性例の精密検査ならびに患児の治療経過を確認するためのフォローアップ検査、臨床症状等からマススクリーニングに関連した疾患が疑われる児の診断補助を目的とした検査を有料で実施しています。
詳しくは以下のページをご参照ください。

公費による先天性代謝異常等検査に関するQ&A

全部ひらく
全部とじる

実際にこの検査で患者はどのくらい見つかっているのでしょうか?

本会の1974年から2023年3月までの新生児マススクリーニング検査で見つかった疾患をまとめました。

新生児マススクリーニング対象疾患の発見数と発見率(1974~2023年度)
分類 疾患名 発見数 発見率







アミノ酸代謝異常症 フェニルケトン尿症 76 1/60,526
メープルシロップ尿症 11 1/418,182
ホモシスチン尿症 5 1/920,001
シトルリン血症Ⅰ型 1 1/1,139,891
アルギニノコハク酸尿症 2 1/569,946
有機酸代謝異常症 プロピオン酸血症 23 1/49,560
メチルマロン酸血症 6 1/189,982
イソ吉草酸血症 1 1/1,139,891
グルタル酸血症Ⅰ型 3 1/379,964
メチルクロトニルグリシン尿症 10 1/113,989
複合カルボキシラーゼ欠損症 1 1/1,139,891
3-ヒドロキシメチルグルタル酸血症 0 -
脂肪酸代謝異常症 中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症 7 1/162,842
極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症 28 1/40,710
三頭酵素欠損症 1 1/1,139,891
カルチニンパルミトイルトランスフェラーゼ-Ⅰ欠損症 1 1/1,139,891
カルチニンパルミトイルトランスフェラーゼ-Ⅱ欠損症 2 1/267,238
糖質代謝異常症 ガラクトース血症 69 1/66,432
先天性甲状腺機能低下症 363 1/2,024
先天性副腎過形成症 170 1/20424
※各疾患の詳細はこちらをご覧ください。

公費による先天性代謝異常等検査は何回受けられますか?

子ども1人につき、検査は原則1回です。
要再検査児、低出生体重児、哺乳不良児のみ再採血を依頼します。

採血が上手くいきませんでした。この検体を送ってもいいですか?

採血量が足りず、ろ紙の裏まで血液がしみ通っていない場合や、広範囲に汚染が認められた場合には検査が実施できません。採血状態の悪いろ紙は破棄し、改めて採血をお願いします。
また、血液を何度も塗り付けたり、表裏から塗っている場合、測定値が高くなり要再検査になる場合があります。

採血状態が悪い例

<血液量不足>

おもて
うら

<汚染・にじみ>

<多重塗り>

ろ紙の発送は、採血後24時間以内を厳守でしょうか。土日休診の場合、難しいのですが。

24時間以内を推奨しますが、24時間を過ぎても受け付けは可能です。休診等で24時間以内に送れない場合には、ろ紙血液を十分に乾燥後、冷蔵庫に保管し、送付日に常温に戻した後に送付してください。

採血後のろ紙を24時間以内に発送できなかった場合の影響を教えてください。

対象疾患の中には、新生児期早期に発症する重篤な疾患が含まれます。ろ紙血中の測定物質は、時間の経過と共に変質・失活が進むことが知られているため、検査開始の遅れが重大な事態を引き起こす可能性がありますのでご理解のうえお取り扱いください。採血・乾燥後は24時間以内のご発送を遵守ください。

【参考】
日本マススクリーニング学会「ろ紙血の採取法・採血時期・保存法」の改訂版
https://www.jsms.gr.jp/download/Revised%20edition_roshiketsu_20240805.pdf

1780gの低出生体重児が初回検査で先天性甲状腺機能低下症の要再検査となりました。
これ以降の結果はどのように報告されるのでしょうか?

以下の表で最終結果判定までの例を説明します。
児が低出生体重児(出生体重2000g未満)の場合、①初回検査報告書見本は、先天性甲状腺機能低下症「要再検査」、その他の疾患は「判定保留」と報告されます。
2回目の採血検体は、先天性甲状腺機能低下症での要再検査検体として取り扱います。
その結果は、②再検査報告書見本に示すように、先天性甲状腺機能低下症の判定がされ、その他の疾患は「判定保留」のままとなります。
その後、3回目に採血いただいた低体重2回目検体によって最終判定がされます。

採血回数 検体種別 先天性甲状腺機能低下症 その他の疾患 判定
1回目 初回検体 要再検査 判定保留 要再検査*
①初回検査報告書見本
2回目 要再検査検体 正常 判定保留 判定保留
②再検査報告書見本
3回目 低体重2回目検体 空白(表示なし) 正常 正常
③低体重2回目報告書見本

※要再検査の結果が届いた際には、低体重2回目の採血時期を待たずに直ちに要再検査検体を送付してください。

東京都の先天性代謝異常等検査の検査システムについて教えてください。

東京都における先天性代謝異常等検査の担当部署はどこですか?

東京都における先天性代謝異常等検査の担当部署は、福祉局 子供・子育て支援部 家庭支援課 母子保健担当です。
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/taisyaijou.html
(上記リンクから、東京都先天性代謝異常等検査実施要綱をダウンロードすることが可能です)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染妊婦から出生した新生児の検体の取り扱いはどうすればいいですか?

特別な対応は必要ありません。一般の新生児と同様にろ紙血検体をお取り扱いください。

【参考】
感染妊婦から出生した新生児のろ紙血の取り扱いについての暫定指針(第2版)
https://www.jsms.gr.jp/contents02-03.html

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症の感染症法上の取扱いが5類に移行(2023年5月8日)したことと最新の研究成果を鑑み、日本マススクリーニング学会では新型コロナウイルス感染妊婦から出生した新生児由来の濾紙血であっても、原則、他のろ紙血検体同様の取扱いで問題ないと報告しています(同年5月16日)。そのため本会においてもこれに準じた取り扱いとします。

出生直後に先天性代謝異常症等を疑う新生児(ハイリスク新生児)が出生した場合、検査を行えますか?

ハイリスク新生児に該当する異常所見が見られた際は、公費での検査とは別に早期に臨時採血を行うことを推奨いたします。
本会では一部検査を有償で実施しています。
その後、日齢4~6日目に通常行う公費の先天性代謝異常等検査の採血をして本会にお送りください。