新生児の健診
(一般の方向け)

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新生児マススクリーニングとは

新生児マススクリーニングは、赤ちゃんの先天性代謝異常等の病気をみつけるための検査です。
本会は東京都産婦人科医会と専門医の協力を得て、全国に先がけて1974年から検査を開始しました。その後、先天性代謝異常5疾患と先天性甲状腺機能低下症、先天性副腎過形成症のマススクリーニングが公費で行われるようになりました。
近年、新しい検査法が開発され、検査できる疾患が大幅に増えました。2012年度からは19種類の疾患を、2018年度からは1疾患を追加して20種類の疾患を、そして2024年度からは3疾患が追加され、23疾患を対象に公費による検査が行われています。
本会では49年間でおよそ450万人のスクリーニングを実施し、病気が発見された子供たちは、適切な治療を受けて元気に育っています。
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先天性代謝異常等とは どんな病気なのでしょうか

検査によって発見される病気の特徴をご紹介いたします。

先天性代謝異常は生まれつき特定の酵素に異常があって起こる病気です。大きくわけて4つの疾患群の検査をしています。
1つ目は、アミノ酸代謝異常症です。特定のアミノ酸が体の中で代謝されずに蓄積し、発育・知能の障害やけいれん発作など、関係するアミノ酸の種類により様々な症状を引き起こします。しかし、新生児期に発見し治療用のミルクによる食事療法などの治療を早期に開始することで健康な生活を送ることができます。

2つ目は、有機酸代謝異常症です。発症すると、アミノ酸が分解される途中でつくられる有機酸が蓄積して、新生児期や乳児期に血液中のアンモニアが異常に高くなったり、強い嘔吐や意識障害、けいれんなどの症状が出現します。このような症状は赤ちゃんの発達や発育にとって有害で、後遺症が残ったり、ときに致命的となることがあります。治療用ミルクなどの食事療法のほか有機酸の蓄積を抑えるための薬で治療します。

3つ目は、脂肪酸代謝異常症です。長い空腹時に体内の脂肪からエネルギーを作りだす過程が障害され、発熱時や絶食時にけいれんや意識障害を引き起こします。重症型では突然死をすることもあります。長時間の絶食を避け、発熱や嘔吐などで十分に食事が取れないときは糖分を摂取するなどエネルギー低下を避けることで、発症を防ぐことができます。

4つ目は、糖代謝異常症です。母乳やミルクに多く含まれる乳糖の成分であるガラクトースを代謝する過程が障害され、哺乳力低下、体重減少、肝腫、黄疸等がみられたり、白内障を発症することがあります。早期に乳糖やガラクトースが除去された治療用ミルクなどの食事療法を行うことで発症を抑えることができます。

先天性甲状腺機能低下症では、神経の発達や新陳代謝をつかさどる甲状腺ホルモンが正常に分泌されないため心身の発育不良を起こします。早期にホルモン補充などの適切な治療を開始すれば正常に発育します。

先天性副腎過形成症は副腎からのホルモンが不足して体のなかのカリウムやナトリウムなどのバランスが崩れ、死にいたることもある病気です。早期に発見することで必要なホルモンを補うなどの治療で発症を抑えることができます。

また、2024年度から以下の3つの疾患が新生児スクリーニング検査に加わりました。

脊髄性筋萎縮症(SMA)は、生まれてから徐々に全身の筋力が低下する病気です。重症型では、呼吸に関わる筋力も弱くなるため、人工呼吸による生活が必要となり、早期に治療を開始しないと致命的されています。新生児期に発見し、筋力低下が進行する前に治療を開始することによって発症を抑えることができます。

重症複合免疫不全症(SCID)は、乳児期から感染症を繰り返す病気で、免疫不全症の中で最も重症型です。特に、BCGワクチンやロタウイルスワクチンを接種すると重篤な副作用を生じることがあり、これらの予防接種の前に発見して治療を開始する必要があります。早期に治療を受けなければ1歳までに亡くなることもある疾患です。

B細胞欠損症(BCD)は、主に男児におこる病気で抗体を作る細胞が不足しているため、母親からの免疫が減り始める生後3~4カ月ごろから感染症にかかりやすくなります。免疫グロブリンなどを投与して体内に抗体を補充し、感染症の重篤化を防ぐ治療をします。
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新生児マススクリーニング検査はどのように行われるのでしょうか

病院では、生まれた赤ちゃんが日齢4日から6日になると、踵からほんの少しの血液をろ紙にとります。
このろ紙血液は本会に送られて、先天性代謝異常等がないかどうか検査をします。検査結果は病院から保護者に報告されます。

検査で陽性を示した赤ちゃんは、専門医の診察を受けます。必要に応じた治療や生活の指導により、障害の発生を防ぐことができるのです。
この検査に要する費用のうち、検査料金は東京都が負担しています。
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新生児マススクリーニング検査の実績

本会の1974年から2023年3月までの新生児マススクリーニング検査で見つかった疾患をまとめました。

新生児マススクリーニング対象疾患の発見数と発見率(1974~2022年度)

分類 疾患名 発見数 発見率







アミノ酸代謝異常症 フェニルケトン尿症 76 1/59,446
メープルシロップ尿症 11 1/410,717
ホモシスチン尿症 5 1/903,578
シトルリン血症Ⅰ型 1 1/1,057,775
アルギニノコハク酸尿症 1 1/1,057,775
有機酸代謝異常症 プロピオン酸血症 21 1/50,370
メチルマロン酸血症 6 1/176,296
イソ吉草酸血症 1 1/1,057,775
グルタル酸血症Ⅰ型 3 1/352,592
メチルクロトニルグリシン尿症 10 1/105,778
複合カルボキシラーゼ欠損症 1 1/1,057,775
脂肪酸代謝異常症 中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症 6 1/176,296
極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症 26 1/40,684
三頭酵素欠損症 1 1/1,057,775
カルチニンパルミトイルトランスフェラーゼ-Ⅰ欠損症 1 1/1,057,775
カルチニンパルミトイルトランスフェラーゼ-Ⅱ欠損症 2 1/226,180
糖質代謝異常症 ガラクトース血症 69 1/65,242
先天性甲状腺機能低下症 319 1/2,045
先天性副腎過形成症 165 1/20,545

※2016~2022年度を対象

情報コーナー、リンク

新生児マススクリーニング検査について さらに詳しくお知りになりたい方は・・・

患者さんやご家族の方々、専門医の活動を紹介するHPもあります

お問い合わせ

03-3269-1134(健診事業部)