低線量ヘリカルCTの導入直後は、体を頭側から足側に向かい1センチごとに撮影していましたので、1人の検査で30枚前後の画像が発生しましたが、その後装置の進歩で1ミリ以下の厚みと間隔で撮影できるようになりました。
本会で行っている通常の人間ドックでは「5ミリの撮影」を行っていますが、ALCAではより精密な画像診断をするために「1ミリの撮影」を行っており、1人の検査をすると300枚以上の画像診断をしなくてはなりません。そこでALCAでは徳島大学工学部と共同研究を行い、コンピュータでの診断支援システム(CADシステム)を開発して、読影に利用しています。
このシステムに掛けると、異常な変化(異常影)があると、コンピュータがマークをつけて警告音も発するようになっているので、微小な病巣や淡い陰影も見過ごすことなく指摘することができるようになりました。
また、CADシステムを使って肺気腫の部分が、肺全体の体積の何%を占めているかを計算する機能も同時に開発しています。肺気腫の存在はCT画像でも認めることはできますが、このシステムにより肺気腫の割合を具体的に数字で表すことができ、病気の進行の程度も診断が可能になりました。
このようにALCAでは常に最新の技術を取り入れつつ、世界でも最も精度の高い呼吸器の検診を提供しています。
ALCAのあゆみ
「東京から肺がんをなくす会」(Anti-Lung Cancer Association : ALCA)は、肺がんを早期に発見することで皆さまの健康を守るため、東京都予防医学協会(本会)と国立がんセンター(当時)の専門医が協力して、X線と喀痰細胞診による検診を行う組織として1975年に誕生しました。発足当初は、喀痰細胞診で発見される「肺門部早期がん」が増加することが予想されていましたが、日本ではむしろX線で発見できる「肺野末梢の肺がん」が増加してきました。
1980年代後半から、末梢の肺がんの早期発見にはX線よりもCTの方が優れていることがわかってきましたが、当初は撮影時間が長く、放射線の被曝量も多く、費用が高いことなどで検診には現実的に利用できないと思われていました。しかし、その後の技術的な進歩で撮影時間も短縮し、被ばく量も下げることが可能になりこれらの問題が解決されました。そこで、1993年にALCAの検診項目に世界で最初に低線量CTを導入、その後コンピュータでの診断支援や、マルチスライスCTなどを追加導入し、常に最先端の技術で高精度な検診を提供してきました。
本会のCT導入前後での検診の成績を国際的に報告したところ、反響が大きく、国内外で肺がん検診へのCT導入が進み、その効果に関する研究も始まりました。米国で行われた大規模な無作為化比較試験(NLST)ではX線での検診群に比べCT検診群では肺がん死亡が20%減少することが証明され、日立市で行われた研究では、検診へのCT導入後5年目から肺がん死亡率が全国平均に比べ25%程度低下することも証明されました。またALCAのデータについても、統計的に分析することにより肺がん死亡率減少効果が明らかであることも証明されました。
一方、高齢化に伴い、さまざまな種類の肺炎も増えており、死亡原因でも「がん」「心臓病」に続き肺炎は3位になっています。また、肺がん以上に喫煙との関連の強い「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」も増えています。したがって会員の健康を守るためには肺がんだけでなく、肺炎やCOPDなど呼吸器疾患を総合的に予防することが必要と考え、その診断のため、2014年4月からは呼吸機能検査、CTでの肺気腫部分の占める割合の測定、喫煙量を推定するスモーカライザーや痰の細菌検査も加えました。 最先端の医療技術を用いた検診とともに、適切な健康指導や治療によって皆様の肺と命を守る「東京から肺がんをなくす会」は、最も伝統と実績のある「肺専門ドック」です。
今後もこの伝統の灯を絶やすことのないように活動に取り組んでまいります。
詳細につきましては、本会ホームページに掲載されている「年報」の「東京から肺がんをなくす会」の項目をご覧ください。