拡大新生児スクリーニング検査

失わずにすむ
命を救う
「拡大新生児スクリーニング検査」を受けませんか。
安心も、希望も広がります。

拡大新生児スクリーニング検査について

拡大新生児スクリーニング検査を実施しています!

公益財団法人東京都予防医学協会は2023年4月より、都内で生まれるお子様を対象に拡大新生児スクリーニング検査を開始しました。
検査の対象となるのは、従来の検査では対象外となっている4つの病気。(2024年4月現在)
いずれも発症後の診断では治療が間に合わない恐れのある疾患ですが、拡大新生児スクリーニング検査で発症前に発見し、適切な治療につなげることで十分な治療効果が得られることがわかっています。
大切なお子様の未来のために、拡大新生児スクリーニング検査の受検をご検討ください。

本会の拡大新生児スクリーニング検査において、先頃、初の診断確定例がみつかりました。
本症例は、原発性免疫不全症の一つ「x連鎖性無γグロブリン血症(XLA)」で、本会の検査によって無症状のうちに発見され、
速やかに診断、治療を開始することができた貴重な症例となりました。
本会は今後も「失わずにすむ命を救う」ために、専門医や関係諸機関と連携しながら精度の高い検査を実施していきます。

なお、本症例については、2023年10月25日付けで東京医科歯科大学病院からプレスリリースされました。
東京医科歯科大学プレスリリースはこちら

元気に生まれた赤ちゃんでも、潜在的に病気を抱えていることがあります。
このような病気の中には、新生児早期からの治療によって発症を予防できるものがあります。

これらの病気を早期発見するために、日本では1977年から公費による新生児スクリーニング検査が行われています。当初は2疾患を対象に検査が行われていましたが、その後、早期発見・治療が可能な病気が徐々に増え、2024年4月からは23疾患の検査が行われています。

一方、検査法や治療法が確立された病気は近年さらに増えてきています。
しかし、それらの病気の検査については、さまざまな理由から公費化されるまでに至っていません。
こうした従来の検査の対象外となっている4疾患の早期発見・早期治療をめざして行われる検査が「拡大新生児スクリーニング検査」です。

拡大新生児スクリーニング検査で発見される病気は、まれな疾患であることから、一般的な血液検査等では発見することが困難です。また、何か症状が出てからの診断、治療では手遅れとなるケースも少なくありません。

このため、拡大新生児スクリーニング検査で新生児期に発見することがたいへん重要です。
拡大新生児スクリーニング検査によって発症前に発見できれば、大学病院などの専門医療機関で治療し、発症を予防したり、発育障害を最小限に抑えたりすることが可能になります。

専門医からのメッセージ

東京慈恵会医科大学小児科学講座
講座担当教授
大石公彦 先生

「失わずにすむ命を救う」 これが私たちのミッションです。

近年の医学の進歩により、以前は発見さえできなかった病気を、正確に診断できるようになりました。また、さまざまな薬が開発され、これまでは不治の病と考えられていた病気を治すことが少しずつ可能になってきました。しかし、生まれて間もない子どもたちへの私たちのミッションは未だ完全に達成することはできていません。たとえ正しい診断や良い治療法があっても、病気を発症する前に治療を開始しなければ手遅れになってしまうからです。そのような問題を解決する方法、それこそが新生児スクリーニングなのです。

現在、赤ちゃんの足の裏から少量の血液をろ紙に染み込ませたサンプルを使った検査で、生まれつきに起こってしまう多くの病気が診断できるようになっています。
このような方法で、見た目は健康であっても、将来的に病気の症状が出てしまう子どもたちを、症状が出る前に発見する方法を新生児スクリーニングと呼んでいます。

現在、東京都では20の病気をスクリーニングしています(新生児マススクリーニング検査)。今後はさらに、脊髄性筋萎縮症(SMA)や重症複合免疫不全症(SCID)などの病気もスクリーニングできる「拡大新生児スクリーニング検査」が、東京都で生まれるすべての赤ちゃんたちに提供できるようになります。
「失わずにすむ命を救う」 このミッションによる恩恵がすべての子どもたちに行き渡るよう、東京都の新生児スクリーニングに携わるすべての医療従事者が協力体制を取り、東京都予防医学協会と手を取り合って日々邁進しています。

2023年4月

拡大新生児スクリーニング検査で発見できる疾患について

すべての疾患において重症度の高いものから軽症のタイプまで存在します。ここでは重症度が高い場合を中心に解説します。
※脊髄性筋萎縮症(SMA)、重症複合免疫不全症(SCID)、B細胞欠損症(BCD)は、2024年4月から公費検査の対象となりました。

ライソゾーム病

細胞内小器官のライソゾームに脂肪や糖が蓄積し、さまざまな臓器障害を引き起こす疾患です。拡大新生児スクリーニング検査では、60種類以上あるライソゾーム酵素のうち発生頻度の高い4種類のライソゾーム酵素欠損症が発見できます。

ファブリー病

概 要 ファブリー病は、αガラクトシダーゼAという酵素の働きが生まれつき悪いために発症する疾患です。
小児期に手足や指の痛みで発症し、20歳以降に進行性の腎障害や心肥大を発症します。40歳を超えると腎不全、心不全や不整脈を発症します。これらの症状から本症を疑うことは難しく、発症から診断まで15年を要すると言われています。治療の遅れを防ぐため、新生児期での検査が有用とされます。
男児、女児ともに発症しますが、男児の方が症状は重いのが一般的です。女児の場合はこの疾患があっても、現行のろ紙血によるスクリーニングでは検出が難しいとされているため、本検査は男児のみが対象となります。

治療法 発症後早期に酵素補充療法を開始することで、手足の痛みを和らげ、腎不全や心不全の発症を予防できると考えられています。

ムコ多糖症Ⅰ型、Ⅱ型

概 要 Ⅰ型ではαイズロニダーゼ、Ⅱ型ではイズロネートスルファターゼという酵素の働きが生まれつき悪いために発症しますが、症状からは見分けがつきにくい疾患です。
Ⅰ型は男の子、女の子とも発症の可能性があるのに対し、Ⅱ型は男の子しか発症しません。
2歳頃から、特徴的な顔つき、繰り返す中耳炎や呼吸障害などを発症し、重症型では知的な遅れを発症します。
治療の遅れを防ぐためには新生児期の検査が有用です。

治療法 Ⅰ型、Ⅱ型ともに酵素補充療法(点滴治療)によって呼吸障害の改善や関節拘縮の進行抑制が可能とされています。
またⅠ型の重症型では、2歳までに骨髄移植をはじめとする造血幹細胞移植を行うことで、知的な遅れの進行を抑えることができるとされています。
Ⅱ型については、2020年に知的な遅れにも有効な酵素補充療法製剤が日本で開発され、保険適用となりました。

ポンペ病

概 要 ポンペ病は、αグルコシダーゼという酵素の働きが生まれつき悪いために発症する疾患です。
最も重症なタイプである乳児型では、出生時より全身の筋力低下が進行します。
呼吸に関わる筋肉の筋力低下から、自分で呼吸することができなくなり、人工呼吸管理が必要となります。
出生時より心不全を発症することもあり、治療しなければ1歳までに亡くなることがあります。

治療法 出生後なるべく早い時期から酵素補充療法(点滴治療)を開始することで筋力低下の進行を抑えることが可能です。

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